天使の足跡






同居開始から2日目。


僕らは普通に学校に通った。

電車も一緒に乗るし、ばったり会った場合には帰りも一緒に帰る。


こうして電車に乗っている時──制服を着ている時だけは友達らしくいられるし、変な噂も気にせずに済んだ。


それにしても、彼と一緒に登下校している時に限って田中に会わなかったのは奇跡だ。



ちなみに、僕たちが共同生活をするにあたって、いくつか約束したことがある。


『生活費は半分ずつ出すこと』

『互いの生活リズムや習慣に口出ししない』

『掃除、ゴミ出し、食事は分担してやること』


それから、


『同居しているということを口外しない』


ということ。


同居していることを口外しないという条件を出したのは、太田だ。

僕もそれには賛成だった。

誰かにバレたら彼の親にも伝えられてしまうかもしれなかったから。

それに、ほら……田中の噂を信じる訳ではないけれど、更におかしな噂が蔓延するのを防ぎたかったからだ。




そしてまた今日も、僕はバイト先へ赴く。

そして、いつものように午後8時にはあがって、買い物も済ませる。


食材調達、調理──今日は僕が当番だ。


そういえば太田って、何が好きでどのくらい食べるんだろう?

バスットボール部だし、体力使うから、健啖家だったりして。

スレンダーのくせに、もしそうだったら面白いなと想像しながら、部屋の鍵を開ける。


しかし家に帰っても彼はいなかった。

学校の友人と寄り道でもしているんだろうか。
< 23 / 152 >

この作品をシェア

pagetop