天使の足跡
(まさか……田中が言ってた、危険な仕事……?)
まさか、だ。
僕の考えすぎだ。
田中の噂なんて、信じるものか。
僕は気長に彼の帰りを待った。
刻々と、無言の時間が過ぎていく。
玄関のドアが鈍い音を立てて開いたのを聞いたのは、それから1時間くらい後だったと思う。
「あ、お帰り」
「ただいま」
疲れ切った顔をした彼に、僕は何も聞くことはできなかった。
むしろ聞かなくても、だいたい分かっている。
田中の噂が正しければ、だが。