天使の足跡
僕は何事もなかったようにテレビに目を向けた。

笑えないようなコントを見ても無理矢理笑って、自然に時が過ぎるのを待った。


その間中、彼がムッとしていたのは分かっていたけれど、僕はそ知らぬ振りをしてやり過ごしていた。


特にまずいことを言った覚えはないので、やっぱりさっきのメールのせいだと思っているけれど……。



それから、『寝床』の問題はというと、実に奇妙なことになったのだ。


太田を客扱いしている僕は


「床で寝るからベッドを使っていいよ」


と言ったのに、


「自分が床で寝ます」


と太田が言い張るのだ。


当然、僕は太田が床に眠るのは大反対だった。

バイトと部活の掛け持ちで疲れきった彼を、敷布団も何もない床で眠らせるのは気が咎めたからだ。

しかし、どちらも譲るばかりで話は進展しない。

そんな僕らが出した結論は。


『セミダブルを二等分』


高校男児には窮屈に思えたが、互いに図体が人より立派じゃないことが不幸中の幸いで、何の不便もなかったのだ。






“よく考えたら、
 僕たちの共生は

 思っていたよりも難しい
 ことなのかもしれない。

 異なった境遇で
 育ってきた二人の間には

 目に見えない、
 厚い壁が立っているから。

 それは、互いに
 背中をくっつけて眠ってる
 今も変わりないんだ──”













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