天使の足跡



“今まで、
 太田が自分のことを
 話したがらなかったのは、
 
 そんな事情があったからだ。


 『──それでも、ここまで
  生きてきたんだよ──』


 彼の言葉に
 考えさせられた、
 『生きる理由』。


 どうしてそこまでして
 生きるのか、
 自分の生きていく場所は
 あるのか、
 生きるって、
 どういうことなのか……


今のことだって、
 たとえ僕がどんな性格の
 持ち主だったにしても、
 簡単には
 言い出せなかっただろう。


 自分の体のことを
 打ち明けた途端に
 距離を置かれるか、

 またはそうでなくても、
 下手に意識して
 顔色を窺うように
 なるかもしれない。


 きっと太田にも
 それが分かっていた。

 僕が平凡すぎる
 性格だから、太田を
 下手に気遣ってしまうことも、
 分かっていたんだよね”













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