天使の足跡
そこに立っていたのは、癒威と同じくらいの背丈の女子生徒だ。

学年で太田と1位、2位を争う成績の持ち主で、クラス1番の美人。


耳に掛けられた少し癖のある茶髪は、パーマでもかけたみたいにふわりとうねっている。


彼女が隣に来て壁に寄り掛かると、その髪までも風が揺らした。


「私、咲城加奈だよ」


自分を指さして笑った時、頬に笑窪ができた。


「知ってるよ、同じクラスじゃん」

「そうだけど、あまり話したことないから、知らないんじゃないかと思って」

「咲城さんって何気に目立つから、知らない奴いないよ。頭良いし、美人だし」


そう言って笑うと、「そうかなあ?」と加奈も照れて笑っていた。


「……ねえ、こんな所で何してるの?」

「教室、騒がしいから」

「もしかして八杉くんたちが苦手なの?」

「正直に言うと、そうかも」

「だよね、私もなんだ。ちょっと怖いもんね。……ねえ、太田くんは進路決めた?」


窓の外を見つめたまま、癒威は首を振る。


「咲城さんは?」

「いっそ、東大! って言ってみようかなあ」


冗談めいて言う加奈を見て、癒威はまた笑った。

加奈も笑っている。

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