天使の足跡
「でも無理よね。そういう有名な大学じゃなくてもいいから、ちゃんと進学して、遠くにいるお母さんのこと安心させてあげたい」

「離れて暮らしてるんだっけ？」

「うん。お父さんが仕事の都合で単身赴任していたんだけど、高校入試をきっかけに、お父さんと住むことにしたの。
タクは進学しないとか言ってるけど、私は進学した方がいいと思うんだよね……」


ふと、癒威が加奈を見る。

加奈も、あっと口を押さえる。


「タク……？」


しばらく視線を泳がせた後、困ったように癒威を見て言った。


「槍沢拓也くん……知ってるよね？　私のイトコなんだ」

「咲城さんと槍沢くんが？」

「うん。私のお母さんとタクのお父さんが兄妹なの。……あの、タクこと、責めないであげて。
夏休み中にタクと電話した時、太田くんとタクのこと聞いちゃって……。
本当は誰にも言わない約束だったんだよね？　ごめんね」

「ううん、そういうことなら別に……でも、知らなかった、二人がイトコだったなんて」

「私も知らなかった、二人が友達だったって。
タクって頼りなさそうに見えるけど、いい子だよ。友達とか、ずっと大事にする子だから。時々ウザいくらい」
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