天使の足跡
「田中に、お前らのこと言ったの、俺だ。
お前が最近バイト休んだり、補習もまともに出なくなったりして、不思議に思ってた。

何かあったんじゃないかと思って様子見に行ったら……あれだ」


太田がいた、と言いたかったのだろう。


大野は眉を顰めて、続ける。


「何か、いろいろ悪い噂とか立ってたから、お前もそういうことしてる仲間なんじゃないかって、実は疑ってた。実際どうなのか知らないけど──」

「『実際どうなのか』だって……?」


大野が言い終わるか終らないかのうちに、怒りを持ったまま視線を向けた。


「大野は、僕とあいつのことを何も知らない。何一つ解ってないよ。田中も……他の周りのみんなも同じだ」


廊下を歩いている生徒が僕らを振り返った。


「噂なんて全部嘘だよ。南高の生徒に聞けば分かる」


僕は、大野だけを睨んでいた。

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