天使の足跡
「あいつがどんなにいい奴か、知らないだろ? あいつが本当は悩んでるってこと、知らないだろ!?
そんなことも分からないくせに、勝手なことばっか言うな!!」
「槍沢……」
僕は大きく呼吸をして、冷静さを取り戻すことを試みる。
すべて息を吐ききって、吸い直した。
喉がジリジリする。
「僕と太田は友達だ。皆がどう思おうと、それは絶対に変わらない。だから『あの子』なんて呼び方はするな」
吐き捨てるようにして言った後、大野の横を通り過ぎて、教室への道を引き返した。
教室までの廊下で、何人もの生徒が僕を冷たい目で見ていたことに気付いていた。
そんなこと、全く気にならなかった。
むしろ、気分は爽快だった。
以前、田中に太田のことで話をされた時は、本当のことを隠していた。
言いたいことを言えずにいた。
でも今は違った。
周りに流されないで、言える。
太田は友達だ、って。