天使の足跡
三谷の頭の中に浮かび始めた、あのトイレの個室事件……。
そして丹葉の「女子みたい」発言……。
表情が強張っていく──。
「どうした、三谷?」
蒼白の顔で丹葉を振り返ると声を低めて、周りに聞こえない音量で言った。
「そんな風に思ってる奴って、他にもいんのかな……?」
「うーん、D組の伊能と瀬川も、太田は強いって言ってたけど」
「そうじゃない、女子みたいって話」
丹葉はぷっと吹き出した後、大爆笑で答えた。
「みんな冗談で言ってんだよ。でも、まあ、女に限らず男にまで告られる美人だしなー。そう思っても無理ないよな」
「はァ!? 何だよそれ」
「え、知らなかったの? 1年の文化祭の後、呼び出されて告白されてた。有名な話だよ?」
「何で俺だけ知らねーんだよ!?」
「三谷に言うと、告った奴が殺されると思って」
「ああ、殺したかもな。つーか、男に告られるとか、あいつ苦労してんな……」
「太田も本気にしてないみたいだし、むしろ面白いネタ出来たって、一緒になって笑ってたよ」
「そうか……」
……まさか、な。
考えすぎだよな……。