天使の足跡
4
『タク? 今、忙しい?』
加奈から連絡があったのは、バイト先の休憩室にいた時だ。
「全然。どうしたの?」
加奈はしばらく間をいてから、『ごめんね』と呟いた。
「何のこと?」
『タクと太田くんのこと……太田くんに話しちゃった』
「えっ、太田はなんて?」
『何も。本当にごめんね、ついタクの名前が出ちゃって』
「い、いいよ、そんなこと……僕も最近、太田の気に障るようなことしちゃったから」
『気に障ること?』
「あ、いや、たいしたことじゃ……。それより太田は何か言ってなかった? まともに話してないから、本当はまだ怒ってるんじゃないかと思って」
『そんなに怒ったようには見えなかったけど……私に言えないくらい、酷い事したの?』
加奈は冗談めいて言っているが、僕は額を軽く押さえた。
確かに悪いことだと思ったから、懺悔したい気持ちだ。
「そう、加奈にも言えないくらい」
『もー、クヨクヨ悩むのやめたら? 男らしくないんだから』