天使の足跡








朝、いつものように校門を潜り抜けた癒威の背後から、可奈が皮靴を鳴らして小走りに駆け寄ってきた。


「おはよう」

「おはよう……どうしたの?」


何か言いたげにしていた彼女の発言を促す。


「あのね、タクが心配してたよ。太田くんに酷い事したって。
男子って女子と違って、そういう事にこだわらないものだと思ってたけど……。すごく沈んでたから、そんなに酷い事したのかなって」

「咲城さんって、槍沢くんのお姉さんみたい」

「よく言われる。タクは嫌みたいだけどね」


ゆっくりと校舎に向かって校庭の道を歩き出す。


「槍沢くんからは、他に何も聞いてない?」

「他に……? ううん」


癒威はどこかの空を見上げて何かを考え、声を小さくして言う。


「前に槍沢くんの部屋に泊まったことがあるんだ。その時に、ちょっと……」


言って、少し間を置いた。


「秘密にしてたことを知られちゃって……でも、本当に謝らなくちゃいけないのは、自分の方なのに……」

「秘密? どんな?」

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