狂愛ラバーズ
回りの雑音でなんて言ったのか聞き取れず、もう一度聞き返そうとした時だった。





｢海斗ー。｣


｢海斗さーん、行きますよー。｣





陸とリカちゃんによって聞き返すタイミングを失ってしまった。





陸達の声は聞こえているが、今は居酒屋より何倍もかれんちゃんのほうが大事。





陸達が僕を呼ぶ声にかれんちゃんの体がビクッと強張るのがわかった。





｢かれんちゃん………｣


｢嘘つきっ。｣





勢いよく見上げるように振り返ったかれんちゃんの姿を見て身体中に衝撃が走った。





回りの雑音が消え失せるほどの衝撃でまた固まってしまった。





下唇を噛み締め、頬は若干赤く目にはたくさんの涙を溜めていた。




初めて女性を可愛いと思った瞬間だった。





“嘘つき”と言い放ったかれんちゃんは逃げるように行ってしまった。





追い掛けたい……けど、足は動かなくて去って行くかれんちゃんの後ろ姿を情けなく眺めるしかなかった。





痺れを切らしたのか、駆け寄って来た陸に理由は告げずただ帰るとだけ言って、ゆっくりと足を進めた。




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