つよくなりたい
「じゃ、またな!」

中学卒業式の日。

あたしは決めてた。

勢いでも何でもいいから、告白するって。

式が終わって、一旦戻った教室。今日ここを出たら、もう二度とここには戻ってこられない。

だから今、言わないと。
あたしは小走りに彼――長谷川の所に向かった。
長谷川は卒業アルバムにコメントを書いて回っていた。

一気に言ってしまわないときっと言えないから、あたしは思いきり息を吸って、

「長谷川っ!あのねっ」

「あ、まー坊。そういえば」

「ふぇえっ!な、何?」
声が裏返る。
予想外にさえぎられた言葉に、ただでさえ緊張しまくってたあたしは完全にパニクってしまった。

「まー坊にコメントまだ書いてないじゃん」

それでも何とか平静に戻ろうとしながら返事する。

「あっ!…そう、です。ね……」

「俺のにも書いてよ」

「あっ、はい!」

「あはっ、何で敬語?最後まで変な奴だよなぁ」
その眩い笑顔に、ついにあたしは臨界突破した。

「変じゃないわぁあっ!普通じゃああっ!」

「はいはぃ。ほらこれ。」

アルバムを交換して、ただ一言「大好きだ!」だけ書いてから、あたしはアルバムを返した。

「ありがとう!俺も書いたよ」

「うん。ありがとう…」

凄いこと書いてしまった…。放心状態でアルバムを受け取り、ぼーっと友達の所にいこうとする背中を見つめ、

………。

…………あっ!

言わなきゃ!

あたしは慌てて去っていく背中を追いかけた。必死で声をかける。

「長谷川っ!」

彼はいつも通りのちょっとにやっとした顔で、振り向いた。

「ん?なに?」

「あっ、あのさ、あたし、」

「うん」

「長谷川が、その…」

言えなくて、あたしは沈黙したまま、長谷川を見つめた。

「…………ぁ……」
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