紙吹雪
「…なんだ…?今の…」
何度も言うようだが灯りはほとんどないのだ。
そんな日にあんな場所で何かが光なんてことはない。
……あれは、どっかから小さく漏れた光が何かに反射したのか?
歳三は極限まで集中力を上げ、その一点を見つめる。
すると歳三のいる場所から三軒ほど先の屋根の上に一つの小さな人影が見えた。
闇と同じ色の服を身に纏い、まるで溶け込むように身を隠す姿はまるで黒猫。
「お前、待て!!」
やっと見つけた相手に声を張り上げる歳三。
その声に弾かれたように再び動き始めた物取りは、歳三の言葉に耳を貸すことなく暗闇の中を走り抜けていく。
「ちっ」
大人しく止まるはずないとは思っていたものの、予想以上の速さで逃げていく物取りに歳三は舌打ちを一つ落とした。
そして急いでその後を追う。