紙吹雪
「かお…なん、で…?」
歳三の戸惑いが滲み出た声が静寂にこだまする。
互いに目を逸らすことはない。
否、そんなことは出来ない。
二人の周りには他の誰人も立ち入ることを許さない空気が満ちていた。
「……かお……」
もう一度ゆっくりと馨の名を呼ぶ歳三。
だが、馨から返事が返ってくることはない。
ただただ視線がぶつかり合うだけの時間が流れる。
それはきっとたった数十秒間の出来事。
しかし歳三にはそれが何十倍も長い時間に感じられた。
…やっぱ返事して、くれねぇか…?
普通に考えたら答えてくれるはずねぇのかもしれない。
それでも、かおの声が聞きたくて。
歳三がそう思った瞬間、今まで一瞬も表情を崩すことのなかった馨がほんの少しだけ眉を寄せた。