紙吹雪




そして、本当に微かな声で紡がれた一言。




「……ごめん、なさ…い…」




馨の発した言葉は静かすぎる空気を伝わり確かに歳三の耳に届いた。

細く小さなその声に歳三は馨の瞳を見つめ返す。



その小さな体で抱えているものを知りたくて。


その表情の答えを知りたくて。



そして見つめた先、不安定に揺れ動く馨の瞳の奥に歳三は言葉に表せない憂いの色を見た気がした。




「…っ」




歳三の揺らぐことの無い強すぎる視線に馨は困ったように眉を八の字に下げ情けなく微笑むと、するりと猫が姿を消すように音もなく闇の中へと溶け込んだ。




「…あっ…」




夜に消えた馨に思わず声が出る歳三。


しかしその後を追うことは出来ず、ぎゅっと掌を握り締めその場に立ち尽くした。



脳裏に鮮明に残るのは最後、哀しげに微笑んだ馨の顔。




あれは、俺が何より見たくなかった彼女の表情─…




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