紙吹雪






「歳っ!」




どれくらいその場に立っていたのか。



歳三を現実に引き戻したのは、遠くから聞こえた親友の声。

歳三はハッとして声のした方へ振り向く。




「勝っつぁん…」




振り向けば遠目に見える勝太の姿。

急いで走ってきたのであろう勝太は、肩で息をしながら歳三に近づいてきた。




「歳!そこの家の男が物取りに襲われたんだって!?犯人見たか!?」




恐らく悲鳴を聞き付けこちらに向かってきたのだろう。

その途中でさっきの家を目撃したようだ。


歳三の肩を掴み興奮気味に喋る勝ったに対し、歳三は思うように言葉を紡げない。





犯人…間違いなく、かおだ。



でもそれ言ったらどうなる?


かおを探してお偉いさんに引き渡せってことになんのか?



……したら俺は二度とかおに会えないかもしれない…?




………それは無理、だめだ。堪えらんねぇ。




< 109 / 320 >

この作品をシェア

pagetop