紙吹雪




翌日、歳三は昨日同様石田散薬を片手に多摩川付近をふらふらと歩いていた。

足元にある石を蹴ながら前に進む。意識は完全に足元に向いていた。


すると




「あっ」




前から聞こえた短い声に顔を上げた歳三の前には、昨日川から引き上げた少女の姿。




「お前、昨日の…」




大丈夫だったか?と声をかけようとした歳三を遮り、少女は深く頭を下げた。




「あの!昨日は助けていただいたのに、お礼も言わずすみませんでした!」




深々とさげられた頭に驚いたのか、歳三は言葉を失い固まる。




(いやいや。俺別にそんな大したことしてねぇし…)




「あ、の…」




何も言わない歳三に不安になったの、おずおずと顔を上げ歳三を見る少女。




「あ、いや気にすんなって。別に大してすげぇことしたわけじゃねぇからさ」




少女の声に漸く正気に戻った歳三は左手で頬を掻きながら困ったように笑った。

その時見えた左手の傷。

その傷を見た少女はガッと目を見開き歳三に駆けよる。




「こっこれ、この怪我…昨日の…?」


「ん?あぁ、大した傷じゃねぇよ。舐めときゃ治る」




少女が駆け寄ってきたことで昨日負った傷のことを思い出した歳三だったが、さして気にした様子もなくそう言い放った。


しかし少女は申し訳なさそうに首を横に振る。


ガサガサと手荷物を探ると出てきたのは小さな薬品袋。


< 11 / 320 >

この作品をシェア

pagetop