紙吹雪




それにあれは…どう見てもただの物取りの所業じゃじゃない。



明らかにあれは…隠密だった。





「…いや、わりぃ勝っつぁん。遠くに後ろ姿は見えたから追っては見たんだけどよ…」




瞬間的に色々なことを考えた歳三の口から出てきたのは小さな嘘。


そんな歳三の声色は、勝太と別れたときとは明らかに違っていた。



僅かに喉の奥で震えている声は歳三の動揺の証。




「…そう、か…まぁ仕方ないよな!」




歳三の変化に首を傾げた勝太だったが、歳三を問い詰めることなく"無事でよかった"といつものよう笑った。



きっと何かに気付いているのだろう。



そんな勝太に申し訳なさが募る。




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