紙吹雪




「先生!土方さん!あの…物取り、は…!?」




駆け寄ってきた惣次郎はマメだらけの小さな手でがしっと歳三の服を掴むと急かすようにその体を揺らした。




「ちょ、落ち着け、惣」

「え、あ…すみません…」




あまりに勢い良く揺さ振られ、後ろに倒れそうになりながらも惣次郎を制す歳三。


その声に何とか落ち着きを取り戻した惣次郎は申し訳なさそうに歳三の着物から手を離し二人を見上げる。




「お、お帰りなさい」




取り乱してすみませんと照れ臭そうに笑う惣次郎を見て歳三の中に募る罪悪感。




惣の汚名、払ってやれなかったっつーことだもんな…俺の私情のせいで。




そう思うものの、歳三が馨のことに対して口を割るなど出来るはずもなく、気持ちを押し殺し口を閉じるほかない。




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