紙吹雪
馨は自分の正体を隠したかったのだろう。
あの仕事は決して正体を知られてはならぬもの。
だから歳三に名を告げることも躊躇った。
「っ…何で、かおなんだよ…!」
よりによって何であいつなんだ!
歳三の中に怒りとも悲しみとも似た感情が沸き上がる。
それでも知ってしまった以上放っておく事など出来なくて。
歳三は朝を迎えたら真実を確かめるため馨と初めて会った場所に行こうと心に決めた。
会える保障はないが、歳三はあの場所以外馨に会える場所を知らない。
「…ぜってぇ確かめる…」
それだけ呟くと歳三は襲ってきた睡魔に耐えきれず目蓋を閉じる。
眠りに堕ちる寸前、本当は馨のことを何も知らない自分が悔しいのだという思いは歳三の内深くへと消えていった。
第三章〜物取〜・完