紙吹雪
《久しぶりの君》
夕暮れ時の多摩川の畔に哀愁漂う背中が一つ。
以前にも見たことがある光景だが、当の本人はそんなことなど気付いてもいない。
「……はぁ……」
綺麗に整った顔を歪ませ漏れる溜息は重く。
俯いてしまう自身に苦笑しながらも、歳三はその場を離れようとはしなかった。
馨と最後に会ったあの新月の夜から三日。
歳三は毎日欠かすことなくこの場所に足を運んでいる。
馨が来るという保障などどこにもない。
しかし、歳三は此処以外に馨と会える場所を知らないのだ。
二人が初めて出会ったこの場所以外。
「…やっぱ…来ねぇの、かな…」