紙吹雪
普段の歳三なら、馨相手に顔を歪ませるようなことはしたくないし、ましてや痣をつけるなど絶対に有り得ない。
しかし、その"絶対"が覆るほど今の歳三は馨の態度に憤りを感じているのだ。
余裕の欠片も無い歳三に力を緩めることなど出来るはずもない。
「っそんな簡単に、逃がすわけ…ねぇ、だろ」
力加減が出来ぬまま握り続けている馨の細い手首。
触れたいと願ったこの手が自分から逃げていく様は、歳三にとって受け入れたくない光景で。
ぐっと耐えなくてはならない苦しさが歳三の表情を険しくさせる。
「…っ…や、だ…」
「やだじゃねぇ!!」
それでも逃げようとする馨に、歳三は今日一番の怒声をあげた。