紙吹雪
唯一思い出せるのは、二度目に会った日に馨が自分の名前を名乗った瞬間だけだった。
それすらも、かなり渋っていた馨から歳三が無理矢理聞き出したようなものなのだが。
とにかく馨は己を見せず、ただ拒むことをしないだけ。
めぐりめぐった考えに歳三はぐっと掌に力を入れ真剣な眼差しで馨を見つめる。
そんな視線から逃れるように馨は顔を逸らした。
そして
「そ、うです。歳さんが特別なわけじゃない」
ズキン ズキン
嫌な音が歳三の頭の中を占めて。
辺りの景色が色褪せていくような、そんな感覚が歳三を襲う。