紙吹雪
「じゃあ…何で俺が迫ったとき、拒まなかったんだよ」
思い出すのは新月の日の夕暮れ時。
拒もうと思えばいくらでも出来たはずの歳三の行動。
それでも馨が突き放すことはなかった。
あの瞬間、確かにこの手の中にあったはず温もりが今は歳三を正面から拒絶していて。
あと少しで触れることが出来そうだった唇は、歳三の心臓を抉るような言葉を紡ぎだしている。
「…理由、なんてありません。誰に迫られても…拒みません、から」
ドクリ、と嫌な音が全身を駆け巡った。
体内の血が全て消え失せていくような焦燥感。
耳を塞ぎたくなる言葉は、馨からだけは絶対に聞きたくなかったもの。