紙吹雪
でも…これが真実か。
これが、かおの…本、音────…
「…は、…俺一人舞い上がってたっつーことか」
歳三は右手で乱暴に後頭部を掻くと、己を嘲笑うかのように口元を歪める。
その視線は何を捉えるでもなく、彷徨うように地面へと吸い込まれていった。
そんな歳三を目の前にし、何か言いたげに口を開く馨。
しかし、その声は口から発されることはなく、聞こえたのは馨がゆっくりと喉を鳴らす音だけ。
それですら、歳三には聞こえないくらいの小さな音で。
行き場をなくした言霊は、静かに馨の中だけに消えていった。