紙吹雪
そんな馨の小さな動揺に気付かなかった歳三は、暫しの間微動もせず黙り込んでいたが、やがてゆっくりと口を開く。
「………最低だな、お前」
そう言った歳三の顔は、今まで馨にして見せたことがないような怒りや悲しみの入り交じった複雑な表情だった。
ぐっと寄せられた眉も歪んでいく口元も、まるで歳三のものではないようなそれ。
こんな顔したの…何時ぶりだっけか…
気丈に振る舞わなくてはと頭では思うものの、そんな理性とは裏腹に歳三の顔は心の乱れを鮮明に映しだす。
ズキン ズキン
鋭い痛みとともに波を打つ心。
目の前が暗くなるってこういうことなんだな、と唐突に理解した歳三。