紙吹雪
いままで理解できなかった大人たちの表現が現実に歳三の前に姿を現していた。
頭の端っこの方で"人間の表現力ってすげぇな"などと、どうでもいいことが浮かんでは消えていく。
ぐるぐるとまとまらない思考のまま歳三が俯いていると、前方からザッと土を踏む音が聞こえた。
それは紛れもなく馨の足音で。
「…そうですよ。最低、なんです。だから、もう私になんて二度と近づかないほうが…関わらないほうがいいんです。私の名前なんて忘れてしまっていいんです…っ!」
それだけ小さく呟くと、馨は歳三に背を向け歩きだす。
一歩一歩確実に踏み出していく馨を止める術なと歳三にはない。