紙吹雪
ふいに後ろから聞こえた聞き慣れた声に歳三は顔を上げる。
そこに立っていたのは紛れもなく歳三の兄である為二郎だった。
口元に穏やかな笑みを浮かべ歳三の近くへと歩み寄る為二郎。
為二郎が一人で部屋の外を出歩くのは非常に珍しい。
どうやら帰ってきてからというものまったく覇気のない歳三の後ろ姿を見兼ねた喜六が、為二郎に相談したようだ。
兄の存在を確認した歳三は再び視線を地面に落とし、すっと腰を浮かべ横に移動すると為二郎が座れる場所をつくる。
慣れたその素早い行動に為二郎の口からは何とも言い難い苦笑いが零れた。