紙吹雪
幾つもの景色を通り過ぎ漸く見えた小さな馨の後ろ姿。
…あぁ…そうだよ…
「あいつの肩…震えてたじゃん…」
冷静になって初めて気付いた馨が見せていた弱さ。
それをかわきりに歳三の中にはこれまでの馨との出来事がまるで舞台を見るように溢れだした。
思い返せば、全ては歳三の無意識な一目惚れから始まったのだ。
初めて馨を見た瞬間から動くことすら出来なくなった足。
名前を初めて聞いた時、躊躇いながらもその愛らしい唇で名を紡いでくれた馨。
また会えるかと尋ねてきたときの表情。
そして歳三が本能に負け、馨に迫ったあの日。
高まった心音は間違いなく二人分のものだった。