紙吹雪




歳三の記憶では、帰りぎわに見たあの家の主は僅かではあるが確かに息をしていた。

恐らく早い発見が功を奏したのだろう(なんといっても、悲鳴が聞こえてからもの数十秒で駆け付けた)。


物取りに襲われた人間としては、初めての生存者かもしれない。




「あの人って…狙われてたんだよな…?」




かおがあの家に狙いを定めたってことは、あそこに何かしら押し入る理由があったっつーことで。




そう小さく呟いてぱたりと歩みを止めた歳三は、近くにあった大きな岩に腰を下ろしあの日あったことを思い出し始めた。


正直歳三は、馨と対峙した瞬間のことは鮮明に覚えているものの、他の部分はあまり印象に残っていない。




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