紙吹雪
《新たな噂》
日の丸が少しずつ西へと傾き始めた頃。
庄左衛門の屋敷を後にした歳三は一人ひたすら道なりに沿って歩いていた。
その頭の中に渦巻いているのは庄左衛門から語られた言葉たち。
『見るまでは私も信じられんかったが、村正に負けず劣らずの刀だった。だが、村正のように銘は刻まれていない』
伝説の妖刀・村正。
それが実在すると聞いただけでも全身に鳥肌が立つ。
それに加え、馨の目的はそれと縁のある刀。
理論的には考えれば考えるほど本来歳三が立ち入るべきではない領域の話である。
しかし、ここで引き下がるなど出来るわけがない。