紙吹雪




深く息を吸い目を瞑って理性で自分にそう言い聞かせる歳三。


しかし、己の本能がそれを激しく否定していた。




…くだらねぇただの噂、だよ、な…?
…それとも本当に…?




ただの噂かもしれない。
自身の感情故の思い違いかもしれない。


それでも、もしその噂が本当だったなら。これはまたとない機会で。




かおに、会えるかもしれない──…!




そう思うや否や、歳三は自分でも驚くほどの早さで地面を蹴り上げ走りだしていた。


向かう先は親友のいる"試衛館"。



風を切る耳がちりっと痛む。

だがそんなものは気にならない。


気になるのはただ一つ。


風の噂の真偽だけ。




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