紙吹雪
お前が奉公先から帰ってきてすぐ、と付け足され歳三は自分の記憶を辿る。
そして思い出したのは馨と出会う数日前、多摩川の土手で交わした会話。
「あー…あの、俺と勝っつぁんは何でこんな違うんだーって吠えたやつ?」
「おーそれそれ」
それほど前の出来事ではないはずなのに、妙に昔のことのように感じるあの日。
恐らくそれ以降の日々が歳三にとって異常に濃かったせいだろう。
あの時の歳三には、何一つ夢中になれるものなど見つけられなくて。
…かなり捻くれたこと言ったよなー…ありゃ完全に愚痴だった。
奉公先の女にあることないこと散々文句を言われた挙げ句に暇を出され苛々していた歳三。