紙吹雪
「さて、俺も帰らねぇと。兄さんたちにどやされっかな」
そう言うと歳三は嫌そうに肩をすくめる。
忘れていたが、歳三は薬販売の帰り。
本来ならばこんなところで道草くっている場合ではない。
「あ、代を…」
歳三の言葉に馨は思い出したように懐に手を入れ薬の代を出そうとしたが、その手は歳三によって止められた。
「いらねぇから、金」
「え、でも…歳さん商いでしょ?」
確かにそうだ。
おそらく、薬の数と代があわない、とか怒られる。
でも…
「いいから。俺からの気持ち。かおは俺の傷手当てしてくれたし。おあいこ、な?」
それは俺がしたくてしたことだから。
金なんか受け取れない。
歳三は馨が手当てしてくれた手を見せながら笑う。
しかし、それでも馨は申し訳なさそうな顔を崩さない。