紙吹雪




だって歳三は今まで一度たりとも惣次郎の前では馨の名前を出したことが無いのだから。


しかし、そんな見るからに動揺した声を発する歳三以上に驚き目の奥を揺らしたのは何故か、その名前を口にした惣次郎本人で。


歳三を見つめていた瞳を最大限に大きく開き隠せない動揺を露にする。

そしてぎゅっとその眉を寄せた。




「馨が…苗字を、名乗ったんですか…?」




その言葉に今度は歳三が同じように眉を寄せる。


真剣な顔つきでの意味深な問い掛けがきになるものの、その理由を問いただせるような雰囲気ではない。


仕方なしに、己が感じた疑問を抑え素直に首を縦に振る歳三。




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