紙吹雪
おい!落ち着け心臓!!落ち着け俺!!!!
何、どうしたってんだよ…ッ!?
足早に歩きながらもバクバクと鳴り続ける心臓に、自分自身に問い掛けずにはいられない。
それでもおさまらない鼓動と頬の熱。
何、俺…病気!?
ついには自らが病なのかとさえ疑い始める歳三。
そんなギリギリの状態である歳三の後ろから
「歳さぁぁんっ!!」
鈴のような馨の声が響いた。
歳三はぐるんっと即座に後ろに振り返る。
パタパタと走り寄ってくる馨は僅かに息をきらせていた。
どうやら思った以上に早く歩みを進めていたらしい。
歳三の傍まで来た馨は一度大きく息を吸うと
「あの…また、会えます…か?」
とまっすぐに歳三の目を見つめた。
どこまでもまっすぐな瞳に思わず吸い込まれそうになる歳三。
「あぁ。俺、よくこっちの方来てるから」
歳三が僅かに微笑んでそう言えば、嬉しそうに笑う馨。
そして小さく頷くと歳三に背を向け駆けていった。
それから…どうやって家まで帰ったかは覚えていない。
覚えているのは馨の笑った顔と自分の大きな鼓動の音だけ──…
第一章〜出逢〜・完