紙吹雪
《君の名を呼ぶ》
強く、そしてそれ以上に優しく馨の名を叫んだのは他の誰でもない歳三で。
その声ではっと我に返った勝太と歳三は視線を歳三へ向ける。
だが、視線を向けられた本人はそれに気をとられることもなく真っすぐに馨を見つめていた。
恐らく刀を押しつけられている店主のことすら目に入っていないだろう。
歳三の瞳に映るのはただ一人、馨だけ。
勿論、馨にもしっかりと届いた歳三の声。
馨は一瞬ピクリと僅かに肩を揺らしたが、振り返ることはせず男に小刀を突き付けたまま小さく言葉を放った。
「……歳さんには…関係、ない」