紙吹雪
そんな歳三の言葉に、表情に、馨の目からはぽろぽろと硝子玉のような涙が零れ落ちた。
それは闇の中でいっそう輝きを増しながら白い肌に跡を残す。
「…な…で…っ」
溢れ出た声は苦しいほど歳三の耳へ鮮明に届いて。
「なん、で…ヒック…そんな…呼ぶの、ぉ…!ぅ…っあんな…あんな、に…ヒッ…な、で…名前ぇ…!!」
痛々しいほど静かに叫ぶ馨は、先程までそこにいた冷徹な仮面をかぶった物取りではない。
仮面を脱いだいつもの、歳三がよく知っている馨の姿。
可愛くて可愛くて仕方のない、歳三が守ると決めたたった一人の大切な女の人。