紙吹雪
…届いた。
心の声に思わず小さく動いた唇。
自分の声が、言葉が馨に届いた。
その事実にほっと息を吐く歳三。
どうやら、まだ想いを諦めることはしなくていいようだ。
そう馨の涙が言っている。
馨の名を呼びながら歳三に不安がなかったわけではない。寧ろ不安で不安で仕方がなかった。
それでも、止めることなく馨の名を呼び続けた歳三の本音は一つだけ。
何で名前呼ぶんだ、なんて…そんなの好きだからに決まってる。
それだけに、決まってる。
だがその想いを言葉にすることはない。
とりあえず得られた答えに安心した歳三は馨に近づこうとゆっくり足を踏みだした。