紙吹雪
「やだっ…歳さ…っ…どないしよ…!」
そんな歳三の笑みは、夜の色に紛れ馨には見えなかったようで。
表情を歪め歳三に触れる馨。
その馨の言葉が聞き慣れない西の訛りを含んでいるのを歳三はぼんやりと聞いていた。
そういや、かおの実家は大坂の方だとか惣が言ってたっけか…?
それならわかると一人納得する歳三。
そんな歳三の心境など馨が知る由もない。
馨は顔を青くしながら慌てて自分の顔を隠すよう巻いていた布を取ると、歳三の傷口をきつく絞めた。
手際よく行われた応急措置は、馨が如何にこうあった状況に慣れているかを物語っている。
それでもそこに焦りが見えるのは、怪我をしたのが歳三だからだろうか。