紙吹雪
「悪かったな。心配かけて」
歳三は自分の右手を伸ばしその人差し指で馨の涙を拭うと、優しく笑ってみせた。
それは今出来る最大限の微笑み。
ずっと看ててくれたのか?と尋ねれば、コクリと小さく頷く馨。
歳三を見つめる瞳にはまだ乾いていない涙が存在したまま。
消えぬ涙に、一体どれほどの心配をかけたのだろうと思う。
しかしそれと同時に、歳三は己の心配をしてくれていた馨に嬉しさも感じていた。
それが歪んだ考えなのだとわかっていながらも消し去ることは出来なくて。
こんな時に、阿呆か俺は。
そう呆れながらも、それだけ彼女のことを好きなのだと思い知る。