紙吹雪
「え、あ…」
そんな歳三の腕の中で驚いたように目を見開いている馨。
数十秒後、やっと今の状況を把握したらしい馨は歳三から離れようと腕に力を入れるが、歳三がそれを許さない。
それどころか、歳三は己の不安を隠すかのようにぎゅっと馨を抱き締め直す。
そして馨の温もりを感じながら同時に思った。
今まで自分が振ってきた女たちもこんな不安や緊張感を感じていたのか、と。
…あんま、いいもんじゃねぇわな。
出来ればあまり体験したいと思えないこの緊張と不安。
これほど心臓がバクバクと早く脈を打ち、苦しいくらいに腹の底が痛くなったことがいまだかつてあったであろうか。