紙吹雪




どれほど綺麗と評判な女に迫られたときも、奉公先から暇を出され家に帰ってきたときも、満月の晩あの小屋に乗り込んだときでさえも。

これほどまでに緊張することは無かったというのに。


そして何より




「俺は…ずっと、かおの味方でいるから」




何より怖いのだ。

馨から言葉が返ってくることが。


どんな言葉が返ってくるのかわからない恐怖。


自分が今まで女たちに言ってきた言葉がどんなものなのかわかっているからこそ、沈黙は歳三の不安を煽る。


馨の言葉も怖いが沈黙も恐い。

矛盾しているがどちらも間違いなく歳三の本音で。


それ故にいつも以上に増える歳三の口数。


馨を抱く腕に力が入るのがわかった。




< 285 / 320 >

この作品をシェア

pagetop