紙吹雪
立花家の再興は限りなく難しいだろう。
少なくとも数年はかかるはずだ。
しかし問題はそれだけではなかった。
いや、寧ろもう一つの問題のほうが深刻だった。
馨が、泣かなかったのだ。
一つの涙も流さず、平然と顔色を変えない。
それに驚いたのは幕府の人間で。
確かに忍の者として感情を殺す訓練をしてきただろう。
しかしまだ齢十にも満たない子供が。
眉を潜めることすらしないなんて。
それは真っ当な人間から見れば異様な光景だった。
周りが気味悪がるほど、何一つ変化を見せなかった馨。
ただじっと横たわる両親の亡骸を見つめていたという。
それから数日後。
馨は忽然とその姿を消した。
探していたのだ。あるものを。
両親の傍になくてはならないはずの物を。