紙吹雪




立花家の再興は限りなく難しいだろう。

少なくとも数年はかかるはずだ。


しかし問題はそれだけではなかった。

いや、寧ろもう一つの問題のほうが深刻だった。


馨が、泣かなかったのだ。


一つの涙も流さず、平然と顔色を変えない。


それに驚いたのは幕府の人間で。


確かに忍の者として感情を殺す訓練をしてきただろう。

しかしまだ齢十にも満たない子供が。

眉を潜めることすらしないなんて。


それは真っ当な人間から見れば異様な光景だった。


周りが気味悪がるほど、何一つ変化を見せなかった馨。


ただじっと横たわる両親の亡骸を見つめていたという。



それから数日後。


馨は忽然とその姿を消した。


探していたのだ。あるものを。


両親の傍になくてはならないはずの物を。




< 305 / 320 >

この作品をシェア

pagetop