紙吹雪




『ここでもっと強くなって、いつか馨を追い抜きますから!』


『負けへんでー』




見ててくださいよ!と力強く宣言する惣次郎に馨の口から思わず小さな笑みが零れた。

それに釣られるようにして惣次郎も楽しそうに表情を緩める。


だがそんな惣次郎に、馨は迷っていた。

ここに来た理由を彼に話すべきなのか否か。




…巻き込んで、ええのやろか…?




巻き込むべきではない。
平穏な生活を送っている彼を。


そう馨の冷静な頭が危険信号を送る。


しかし、彼しかいないのだ。

馨が頼ることの出来る相手は、たった一人惣次郎だけ。




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