紙吹雪
暫くたわいもない会話を交わした後、訪れた小さな沈黙。
馨は意を決したように顔を上げ、真っすぐに惣次郎を見つめた。
突如真剣な色に変わったその瞳に、惣次郎も表情を引き締め馨を見つめ返す。
瞳同士が確かに交じりあったとき、馨の口から紡がれたこの地へ来た来た理由。
馨の口から音になる言葉は、少しずつ惣次郎の体温を奪っていく。
一瞬の張り詰めた空気の後、惣次郎のひゅっと空気をのむ音が聞こえた。
『あの刀が、この辺りに…?』
惣次郎の顔に緊張が走る。
その声は微かに上ずっていて。
惣次郎は知っていた。
その刀が一体どんなものなのか。
それが馨のもとから無くなったということがどんな意味を持っているのかを。