紙吹雪
『それは…盗まれた、ということですか?』
眉を寄せ半ば確認のように問い掛けられた惣次郎の言葉に、馨はこくりと頷いた。
一切の迷いを見せず。
馨が躊躇いなく頷いたということは確信と確証がある、ということ。
その事実に、更に険しくなる惣次郎の表情。
何てことを…
惣次郎の頭に浮かぶ、一度だけ目にしたことのある刀の姿。
今にも呑み込まれそうになったのを覚えている。
あれは絶対に立花の手元に無くてはならないもので。
立花の為に存在するといっても過言でないそれは、他の誰人にも到底扱えぬ代物。
そして、誰もが欲するものである。
随分と勇気のある人がいたものだと惣次郎は思った。