紙吹雪
『馬鹿な人たちもいるんですね』
静かな空気に響いたのは、まるで音のない声だった。
惣次郎の口から紡がれたその呟きに、馨は曖昧な笑みを浮かべる。
その言葉にまったく感情が籠もっていないことに気付きながら。
こういうとこが、怖い。
いつも天真爛漫で、にっこりと明るく優しい笑みを浮かべている惣次郎。
そんな彼が時々見せる冷酷にも似た色の瞳。
現実的というか大人びているというか、子どもらしくないというか。
ほんま、怖い。
馨でさえ背筋がぞっとすることがあるそれ。
惣次郎のことだ。
意識して使い分けているわけではないだろう。
それでも彼は決して敵に回したくない相手。