紙吹雪




そう思いながら零れた馨の表情はどこか嬉しそうで。


その小さな変化に惣次郎の笑みも深くなる。




『何か手伝えることがあったら何でも言って……あ!』




くださいね、と続くはずだったであろう勢いのあった惣次郎の言葉が突然止まった。


それと同時に馨に向いていたはずの彼の視線は、何故か試衛館の入り口近くに注がれていて。




誰かいるの…?




何事かと思い馨も同じようにそちらに目を向ければ、そこに見えたのは艶のある黒い髪を乱暴に結んだ一人の色男。

背中には薬品入れのような箱を背負っている。


薬師か何かなのかとも思ったが、それにしては惣次郎の反応が大きすぎる気もした。




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